美容師になる夢を抱いて専門学校に入学
僕が美容師になりたいと思ったのは、高校の文化祭で友達の髪をセットしたときに「センスあるね」と言われたのがきっかけでした。人をきれいにする仕事って素敵だなと思って、卒業後すぐに美容専門学校に入学しました。最初はワクワクしていて、授業も楽しく感じていました。
でも、薬品を使った実習が始まると、僕の手はみるみる荒れていきました。赤く腫れて、ひび割れて、痛みでハサミを持つのもつらくなってしまいました。皮膚科に通っても改善せず、先生にも「このままだと続けるのは厳しいかも」と言われてしまい、僕は夢を諦めざるを得ませんでした。
ホストに挑戦するもすぐに挫折
学校に行かなくなったことを親には言えず、僕は何か稼げる仕事を探していました。そんなとき、ネットでホストの求人を見つけて、「とりあえずやってみよう」と面接を受けました。見た目には少し自信があったし、話すのも嫌いじゃなかったので、いけるかもと思ったんです。
でも現実は甘くありませんでした。毎晩のように飲み続ける生活、売上のプレッシャー、先輩との上下関係……僕には耐えられませんでした。結局、一週間で辞めてしまいました。何がしたいのか、自分でもわからなくなっていました。
友達との再会が転機になった夜
そんなある日、新宿で久しぶりに会った高校の友達と飲みに行きました。彼は以前ホストをしていたけど、今は出張ホストのキャストとして働いているとのこと。しかも、収入ランキングでトップ3に入っているらしく、かなり羽振りが良くなっていました。
話を聞いてみると、出張ホストはお店で接客するのとは違って、お客様の希望に合わせて出向くスタイルで、会話や趣味を楽しむことが中心だそうです。彼も最初は不安だったけど、やってみたら意外と向いていたとのこと。僕も「短期でやってみてダメならやめればいいか」と思い、挑戦してみることにしました。
趣味が仕事につながった瞬間
面接では、僕が趣味でカクテルづくりをしていることを話したら、それが気に入られてキャスト兼バーテンダーとして採用されました。お客様にオリジナルカクテルを振る舞ったり、会話を楽しんだりするうちに、少しずつ自信がついてきました。
今では新店舗のオープン準備や酒の仕入れ、フリーのお客様の対応など、黒服としても活躍しています。シフト管理や裏方の仕事も覚えて、チームを支える立場になってきました。美容師の夢は叶いませんでしたが、今の仕事にやりがいを感じています。
親への告白と新たな目標
専門学校に行っていないことが親にバレたときは、正直すごく怖かったです。でも、ちゃんと話そうと思って、水商売の仕事をしていることを伝えました。驚かれましたが、僕の覚悟を見てくれて、「自立するなら応援する」と言ってくれました。それからは家を出て、仕送りも始めました。
今は、将来ダイニングバーを経営することを目標にしています。カクテルづくりの技術も磨きながら、接客や店舗運営のノウハウを学んでいます。出張ホストの仕事を通じて、高収入だけでなく、新しい夢も見つけることができました。あのときの挫折があったからこそ、今の僕があるのだと思います。
ゆうと 21歳 出張ホスト