遼太 23歳 出張ホスト
家族と続けてきた焼き肉屋の経営が限界に
僕は23歳、東京都下の実家で家族と一緒に焼き肉屋を経営しています。祖父の代から続くこの店は、地域の人たちに愛されてきた大切な場所。でも、時代の流れやコロナ禍の影響もあって、経営は年々厳しくなっていました。
とくにここ最近は仕入れ値の高騰や客足の減少も重なって、ついに400万円もの借金を抱えることに。両親も疲弊していて、妹も心配そうな顔をするようになりました。このままじゃ店を続けていけない。僕はそう感じて、一度店の仕事を離れ、別の道でお金を稼ぐ決意をしたんです。
高額バイトを探しでたどり着いた出張ホスト
最初は解体現場の仕事を始めました。体力には自信があるので、重労働でもやるしかないと覚悟していました。でも、想像以上に過酷で、体を壊してしまっては元も子もないなと不安にもなりました。
そんなとき、スマホで「高額バイト」と検索していたら、ふと目に入ったのが「出張ホスト募集」の広告でした。最初はホストクラブみたいな華やかな世界かと思っていたけど、内容をよく読んでみると、外出がメインで、お客様の話を聞いたり、食事に付き添ったりなど、よくあるホストのように酒を大量に飲むような仕事ではない仕事だったんです。
「これなら、自分にもできるかもしれない」そう思って、腹をくくって応募しました。
週5勤務の新生活と家族の奮闘
出張ホストとして働き始めてからは、週5でびっしりシフトを入れました。最初は緊張の連続でしたが、お客様とじっくり向き合う仕事は、思いのほか自分に合っていました。感謝の言葉をもらえることも多くて、やりがいも感じていました。
その間、僕は新宿の古いアパートに引っ越しました。家賃を抑え、生活費もできるだけ節約し、稼いだ分はすべて借金返済と実家の店に回しました。
店はというと、両親と妹、そしてパートの方がなんとか切り盛りしてくれていました。電話で話すたび、「お前の稼ぎで助かってるよ」と言ってくれる母の声に、何度も泣きそうになりました。
店再建に成功し少しだけの自分の生活環境も改善
1年が経ち、借金はなんとか4分の1まで減らすことができました。少し余裕も出てきて、店の内装をリニューアルすることに。お客さんからの評判もよく、売上も少しずつ戻ってきました。
僕自身も、新宿の少し広めのマンションに引っ越しました。もちろん贅沢はしていませんが、清潔で静かな空間は、心の安定にもつながっています。
時間のあるときは、有名な飲食店に足を運んで勉強もしています。良い接客、美味しい料理、空間の作り方など、学んだことはすぐ実家の店にフィードバック。少しでもお客様に喜んでもらえるよう、日々改善を重ねています。
家族と守り続ける味を未来へ
今は、もう少しだけ出張ホストの仕事を続けて、二号店の開業資金をためているところです。忙しい毎日ではありますが、やりがいと目的があるから頑張れます。
僕の夢は、祖父の代から続いてきたこの焼き肉屋の屋号を、まだ見ぬ自分の子どもたちにも受け継いでもらうことです。家族と一緒に苦労し、立て直してきたこの店を、これからも大切に育てていきたいと思っています。