塾の倒産と将来への迷い
私は大学を卒業してから中学受験をメインにした塾で講師として働いていました。勉強を教えることはやりがいがあり、生徒が合格を勝ち取ったときには自分のことのように嬉しかったです。しかし、少子化の影響は思った以上に大きく、通ってくる生徒の数は年々減少していきました。気がつけば経営が厳しくなり、私が25歳を迎える少し前に塾は倒産してしまったのです。
突然の失業に戸惑いながらも就職活動を始めましたが、なかなか思うように結果は出ませんでした。日々の生活費で貯金はどんどん減っていき、不安と焦りばかりが募ります。気持ちが追い詰められていたのか、普段は見向きもしなかったパチンコや競馬に手を出し、さらにお金の減りが加速してしまいました。気がつけば、心身ともに余裕のない生活になっていたのです。
出張ホストという新しい選択
実家のある青森に帰ろうか、それとも高収入のアルバイトで食いつなごうか、そんなことを毎日のように考えていました。そんな時に、たまたま目に入ったのが出張ホストの求人広告でした。正直、最初は半信半疑で「自分なんかにできるのだろうか」と思いましたが、背に腹は代えられません。思い切って応募し、面接で今の苦しい状況を正直に話したところ、ありがたいことに採用していただけました。
見た目も性格も普通の自分に需要があるのか不安でしたが、マネージャーさんから「こういう普通の人が意外と稼げるんですよ」と声をかけてもらい、少し心が軽くなったのを覚えています。初めてのお仕事は緊張しましたが、丁寧に対応することを心がけているうちに、思っていた以上にお客様から喜んでもらえることが多く、すぐに慣れることができました。
塾時代の3倍近い収入で余裕ができた
気がつけば週に4~5回ほど出勤するようになり、塾講師をしていた頃の3倍近い収入を得られるようになりました。お金の心配をしなくていい生活に変わると、自然と気持ちにも余裕が生まれてきます。好きな服を買ったり、美味しいご飯を食べたり、以前の私では考えられなかった暮らしができるようになりました。
しかし同時に、このまま何年も続けられる仕事ではないことも理解していました。出張ホストは体力的にも精神的にも若さが大切な世界です。今は稼げていても、いつか必ず限界が来ることを考えると、不安も消えるわけではありませんでした。
新しい夢として資格取得に挑戦
そんな折、常連のお客様の中に会社を経営されている方がいて、その方の話を聞くうちに「経営やビジネスに関わる仕事をしてみたい」という気持ちが芽生えてきました。特に、中小企業診断士という資格に興味を持ち、現在は勉強を始めています。もし資格を取ることができたら、コンサルタントとして力をつけ、30歳を過ぎたあたりで独立することが目標です。
振り返れば、塾が倒産しなければ今も黒板の前に立っていたかもしれませんし、出張ホストの仕事に出会わなければ、日雇いのアルバイトを転々としていた可能性もありました。人生の流れは予想できないものですが、だからこそ与えられたチャンスを大切にし、自分の未来につなげていきたいと思っています。
運命の出会いを力に変えて明るい未来を目指す
私は今、自分が選んだ道を前向きに受け入れています。もちろん順調なことばかりではなく、不安や迷いはこれからもあるでしょう。それでも、倒産や失業といった過去の出来事を乗り越えてきたからこそ、新しい挑戦にも立ち向かえる気がします。
出張ホストという一風変わった仕事に救われた経験は、私にとって大きな転機です。この運命を無駄にせず、自分の力で人生を切り開いていきたい。そう心から思えるようになったことが、今の私にとって一番の収穫なのかもしれません。
一真 25歳 元塾講師