大成 23歳 会社経営者
音楽の夢と現実のギャップ
僕はは21歳のとき、音楽系メディアの編集者を目指して専門学校を卒業しました。音楽が好きで、小説を読みながらイヤホンでお気に入りのバンドを聴くような、インドアな性格です。人と話すのは得意ではありませんが、的を射た言葉を選ぶのは好きで、同性の友人からは「話していて落ち着く」と言われることが多いです。
卒業後、念願だった音楽系の出版会社に就職しました。最初は夢が叶ったような気持ちでいっぱいでしたが、現実はそう甘くありませんでした。上司はいい加減で、仕事の指示も曖昧。大卒の社員ばかりが優遇される空気に、次第に居心地の悪さを感じるようになりました。結局、1年ほどで退職することにしました。
やりがいのない日々と偶然の出会い
退職後は、姉夫婦が運営していたアパレル系ECサイトの受注管理や発送業務を手伝うようになりました。自分の好きなブランドでもなく、残業もなく、淡々とした毎日。仕事にやりがいを感じることはなく、帰宅後に短時間でできる副業を探していたとき、偶然「出張ホスト」の求人サイトを見つけました。
学生時代にコンビニでバイトをしていたくらいで、接客業の経験はほとんどありませんでした。でも、体験談を読んでみると「お客様のおごりで食事やお酒が楽しめる」とあり、なんとなく惹かれました。タダで飯が食えて、お金ももらえるなんて、悪くないかも。もし合わなかったら、今の仕事もあるし…そんな軽い気持ちで面接に応募しました。
予想外の評価と意外な適性
面接では、マネージャーに「君、身長も高いし、落ち着いていて雰囲気があるね」と言われ、意外にもすんなり採用されました。実際の接客では、特に頑張ることもなく淡々と対応していたのですが、思った以上に指名が入り、週に3〜5回の出勤で、月に40〜60万円ほど稼げるようになりました。
特別な努力をしているわけではありませんが、背が高くて細身なこともあり、お客様と一緒に歩いていると「モデルみたいだね」と言われることが多いです。あと、声が低いので「一緒にいると落ち着く」とも言われます。これらは自分の実力というより、両親に感謝すべき部分だと思っています。
転機と新たな挑戦
出張ホストの仕事を始めて1年ほど経ったころ、姉夫婦がECサイトを手放したいという話を聞きました。すでに業務のノウハウは身についていたので、在庫ごと買い取り、自分で運営することにしました。徐々に自分の好きなドメスティック系ブランドに絞って、自身もモデルになりつつ商品を展開したところ、売り上げも徐々に伸びてきて、やりがいを感じるようになりました。
現在は会社を立ち上げ、ECサイトの運営に注力しています。出張ホストの仕事は少しセーブしていますが、もし会社がうまくいかなくなったら、また戻ればいいかと、気楽に考えています。最近は友人の紹介で知り合った服飾デザイナーの彼女と一緒に、彼女のデザインした服を販売する準備も進めています。
振り返ればすべてがつながっていた
音楽業界で働く夢は叶いませんでしたが、今は自分のペースで好きなことを仕事にできています。出張ホストという、一般的には少し変わった仕事がきっかけで、自分の可能性に気づくことができました。あのとき、なんとなく応募してみて本当によかったと思います。これからも、無理せず、自分らしく生きていけたらと思っています。