体育大学を卒業してから半年。周りの友人たちが次々と社会人になっていく中、自分だけが進路が決まらないまま、コンビニのアルバイトで日々を過ごしていました。給料日が来ても生活費で消えていく毎日。夜中にバスケットボールコートで一人ボール音を聞きながら、ふと思うんです。「このままじゃ駄目だ」と。体の不調に悩む人を支えたい、そういう気持ちで鍼灸師になりたいという夢を抱いていましたが、専門学校の入学資金の目処は全く立たていなかったんです。
迷いながらも進み始めた転機
大学時代もバスケットボール部に属していて、毎日体を動かすことが当たり前の環境にいました。卒業後も週に何度かコートに通い、シュートを打つリズムの中で考え事をする。その習慣だけは絶対に手放さないでいたんです。体力には自信がありましたし、人間関係も広かったので、体育会系の先輩や友人が多く周りにいました。
「お前、体育会系のノリだし、営業とかどう?」そういった声をかけてくれる人もいましたが、正直ピンときていませんでした。ただ焦ってはいけないと思い、毎日コンビニのバイトをしながら、夜はバスケットボールをする。そういう生活の繰り返しでした。でもお金は貯まらない。夢は遠い。心の中では、常に不安が根付いていたんです。
バスケ仲間からの一言が人生を変えた
その転機は、バスケットボールコートでの何気ない会話からやって来ました。週に3回ほど一緒にプレーしていた先輩が、「俺の友達が出張ホストやってるんだけど、すごく稼いでるらしいよ」って何気なく言ったんです。出張ホストという職業は知っていましたが、自分とは無関係な世界だと思っていました。でもその先輩が「お前みたいなタイプなら、マジで向いてると思うよ」と真っすぐに勧めてくれたんです。
正直、最初は迷いました。夜間の仕事ですし、親に報告する時も少し躊躇いました。でも考えてみたら、体力には自信があるし、バスケ部で培った礼儀や上下関係の厳しさも身についている。何より、専門学校という明確な目標があって、そのための資金が必要だったんです。迷う理由よりも、挑戦する理由の方が大きかった。紹介してもらい、思い切って新宿の出張ホストの面接に向かいました。
体育会系の礼儀と真っすぐな人柄が評価された
面接では、採用担当の方が「体育会系の雰囲気、いいですね。挨拶もしっかりしてるし、落ち着いてる」と言ってくれました。その言葉が素直に嬉しくて、バスケ部での経験が無駄じゃなかったんだなって実感できました。入店してから最初の3週間は、正直大変でした。どんな話をすればいいのか、どのタイミングで何を言うべきか。接客経験が浅い分、戸惑うことばかりでした。
でも、先輩キャストやスタッフの方々が丁寧に教えてくれました。「大事なのはハキハキした受け答えと誠実さ。お客様はそういうの見てますよ」という言葉が今も頭に残っています。バスケ部で学んだ「返事は0.5秒で」という習慣も、ここでは本当に活躍しました。真っすぐで、飾らない対応を心がけていたら、スタッフからも「あいつは信頼できる」と評価されるようになりました。
指名が徐々に増えていったのは、その3ヶ月目の頃です。常連としてお越しになるお客様も増えてきて、「君の真面目さが好きだよ」と言ってくださる方もいました。高額な稼ぎも悪くありませんでしたが、それ以上に「信頼される」という経験が自分の自信につながっていきました。
バスケと仕事の両立で見つかったリズム
新宿での出張ホストの仕事を始めてからも、バスケットボールは絶対に手放しませんでした。むしろ、体を動かす時間がより大切に感じるようになったんです。夜遅い仕事をしたあと、昼間にコートに立ってボールを握ると、頭がリセットされる感覚がありました。
体育会系だからこそ、「やることはやってから遊ぶ」という感覚が身についていました。朝練に向かう前に稼いだお金を記帳して、いくら貯まったか確認する。そして夕方のコートで心身をリフレッシュさせ、夜の仕事に臨む。そういった流れが自分の中で上手くいくようになったんです。仲間たちも「お前、バスケと仕事、両立してるんだ」と驚いてくれました。
この環境の中で、気づいたことがあります。専門学校に通う資金という明確な目標があるから、仕事も練習も頑張れるんだということです。目標がなければ、どちらも中途半端になっていたと思うんです。体育会系の「目標に向かってやり切る」という姿勢が、この仕事の中でも活かされていたんだと感じました。
計画的に積み上げた資金と変わった人生
出張ホストとしての稼ぎが本格化してから、1年が経ちました。毎月の給料から生活費を引いて、きっちり専門学校の入学資金として貯めてきました。体育会系らしく「月いくら貯める」と目標を立ててから、それを超えるために工夫したり、指名を増やすための努力をしたり。そういった地道な積み重ねが、今では形になってきました。
先月、鍼灸師養成の専門学校から合格通知が届きました。涙が出ました。コンビニのアルバイトで進路も見えない状態から、出張ホストで働き、東京で資金を稼ぎ、専門学校への道を切り開いた。自分の人生がここまで変わるなんて、1年前には想像できていませんでした。
この職場で一緒に働く仲間たちも、みんな何か目標を持っていて、その姿勢が本当に励みになります。美容師志望の先輩、大学再受験を目指してる同期、起業を夢見ている友人。みんな違う夢だけれど、今を真摯に生きている姿勢は共通しています。そういう環境にいることで、自分も「絶対に成功させたい」という気持ちが強くなるんです。
これからの夢と感謝の気持ち
専門学校に通い始めてからも、出張ホストの仕事は続けるつもりです。学費や教科書代、実習費など何かと必要なお金もありますし、何より体を動かすことで体調管理ができます。健康を何より大切にする職業を目指しているからこそ、自分の体との向き合い方も学べるんです。
卒業後は、鍼灸師として多くの人の体の不調を支えられる存在になりたい。バスケ部で怪我をしていた仲間たちを見てきたから、そういう時に寄り添える医療従事者になりたいんです。出張ホストの仕事を通じて、初めて「お客様との信頼関係」というものの大切さを実感できました。それは、鍼灸師としても絶対に大事なことだと思います。
紹介してくれたバスケ仲間、丁寧に教えてくれたスタッフの方々、指名してくださったお客様。本当にたくさんの人に支えられながら、ここまで来ました。今、新宿で働く中で感じるのは、環境が人を変えるんだということです。体育会系の礼儀を大切にしながら、それでも柔軟に、目標に向かって一歩一歩進んでいく。その過程で出会う人たちとの信頼関係が、何物にも代え難い財産になるんだと、この仕事が教えてくれました。
タケシ 20歳 体育大学卒業生

