専門学校の授業が終わると、急いで帰宅してゲームコントローラーを握る。そんな毎日が当たり前だった、去年の自分のことです。ゲームは本当に好きで、新作が出ればすぐに購入するし、有名な大会の配信も欠かさず見ていました。ただ、そのゲームに費やすお金をどうしようかというのが、常に頭の片隅にありました。
専門学校の学費と生活費でギリギリの状態だったので、バイト代のほとんどを学費に充てざるを得ませんでした。稼いだお金で好きなゲームに投資することなんて、夢のような話でした。それでも何とかやりくりしながら、限られた資金でゲームを続けていたんです。
物静かな性格だから接客業は無理だと思ってた
元々僕は人見知りで、物静かな性格です。話すときも小声になってしまう癖があるし、初対面の人とコミュニケーションを取るのは苦手でした。だから、接客業なんて自分には絶対に無理だと思い込んでいました。お店の人のように明るく、テキパキとお客様に対応する自分の姿が、どうしても想像できなかったんです。
そんな中、求人サイトを眺めていると、出張ホストのキャスト募集が目に入りました。普通なら見向きもしないはずなのに、その募集欄に書かれていた「シフトの自由度が高い」という文言に、ついつい惹かれてしまったんです。専門学校と両立できるバイトを探していたので、好きな時間に働ける環境というのは、僕にとって理想的でした。
応募してみようかな、という軽い気持ちで面接を受けることにしました。緊張していたこともあって、面接ではうまく話せず、言葉もかみかみになってしまいました。こんなんで採用されるわけないだろうと、半分諦めていたくらいです。
「無理に明るく振る舞わなくていい」という言葉が転機になった
ところが、面接をしてくれた担当者の方が、僕の緊張した様子を見て、こう言ってくれたんです。「無理に明るく振る舞わなくていい。自分らしさを大事にして働いている人もいっぱいいるよ」と。その一言で、胸がスッと軽くなりました。今まで接客業=明るく元気に、という固定観念に縛られていたんだなと気づかされました。
採用してもらえることになった時は、本当に安心しました。物静かなままでいいんだ、自分のペースで大丈夫なんだという安心感が、働き始める不安を大きく軽くしてくれたのです。こうして、出張ホストとしての仕事が始まりました。
ゲームの話題がお客様との距離を一気に縮めた
働き始めた当初は、やはり会話に苦労しました。何を話せばいいのか分からなくて、沈黙の時間が怖くて、無理に話題を作ろうとしていました。ぎこちない会話になることも多くて、「やっぱり僕は接客に向いてないのかな」と弱気になることもありました。
でも、回を重ねるごとに、思いがけないことに気づき始めたんです。お客様の中には、ゲームに興味を持っている方がいて、そういう時に僕は自然と目が輝いて、言葉もスムーズに出てくるんです。ゲームの話になると、一気に会話が盛り上がるんです。自分の好きなことだから、それはもう楽しくて仕方ないんですよ。
そしてそこから気づいたのは、無理に明るく装ったり、会話スキルを磨こうとしたりするよりも、自分が心から楽しめる話題で繋がる方が、お客様との関係も深くなるということでした。物静かでいいんだ。自分らしく接客できるんだ。そういう実感が、仕事への見方を180度変えてくれました。
大会への本気な挑戦を決意した瞬間
指名が少しずつ増え始めた頃のこと。好きなゲームタイトルで盛り上がったお客様がいました。その方は、そのゲームの公式大会に参加したことがあるというんです。大会の話、参加するために必要なこと、プロを目指す人たちの話。初めて聞く話ばかりで、僕は食い入るように聞いていました。
その会話を通じて、「自分も本気で挑戦してみたい」という気持ちが、突然芽生えたんです。今まで、ゲームは好きだけど、まさか自分がプロを目指すなんて、そんなことは考えたこともありませんでした。でも、あのお客様の話を聞いていると、不可能な夢じゃないんだという気がしてきたんです。
それからの生活が変わりました。ゲームをするだけじゃなくて、大会に出るために何が必要かを考えるようになったんです。機材のアップグレード、上級プレイヤーの動きの研究、練習時間の確保。そのためにはお金が必要だし、時間も必要でした。
出張ホストの仕事が、夢に向かうための土台になった
少しずつ指名が増えてくると、収入も安定してきました。それまでは毎月カツカツだった生活に、ようやく少しの余裕が生まれてきたんです。その余裕が、ゲームへの投資に使えるようになりました。新しい機材を購入して、練習環境を整えて。今まで妥協していたいろいろなことが、少しずつ改善されていく喜びを感じていました。
働いていく中で気づいたのは、物静かなままでも、自分のペースで働いても、ちゃんと認めてもらえる場所があるということです。むしろ、自分らしさを保つことの方が、お客様からの信頼や指名に繋がっているんじゃないかと感じるようになりました。そういう環境の中で、プロゲーマーという夢にも向き合えるようになったんです。
物静かな性格に対して、いつも「もっと明るくなれたら」って思っていました。でも、そんな自分を受け入れてくれる場所があると分かったことが、自分の性格に自信を持つきっかけになったんです。それが、プロゲーマーという大きな夢を追いかけるための、心の土台になっているような気がしています。
将来に向けて、今を全力で生きる
今、僕の人生には明確な目標があります。プロゲーマーとして活動すること。それは決して手の届かない夢ではなく、きちんと計画を立てて、一歩一歩進んでいけば実現できる目標だと思っています。出張ホストの仕事で得た収入は、大会参加費や機材購入に充てています。毎日の練習時間も確保できていますし、経済的な心配も少なくなりました。
この仕事をしていなかったら、こんな状況には絶対になかったと思います。シフトの自由度が高いという条件が、専門学校とゲームの練習の両立を可能にしてくれました。そして、何より大切なのは、ここで働く中で自分の性格を受け入れることができたことです。物静かだからダメなのではなく、そのままの自分で誰かの役に立つことができるんだということを学んだ。
これからも、専門学校に通いながら、出張ホストとして高額な収入を得て、ゲームの練習に時間を費やしていく。その過程で、新しい出会いや気づきもあるんでしょう。同じようにシフトの融通が必要な人たちや、目標を持ちながら働いている人たちと一緒に、毎日を積み重ねていく。そういう日常の中で、プロゲーマーという夢が現実に近づいていくのだと思います。自分らしさを大切にしながら、着実に前に進む。それが、今の僕の姿勢です。
翔太 22歳 専門学生

