ずっとプラプラしてた自分です
僕は東京郊外では結構名の知れている不動産屋の息子で、家は正直、かなり裕福な方だったと思います。そういう家の子なんで、やっぱりテキトーな人間に育ってしまい、大学卒業しても就職もせずプラプラする日々が続いていました。周りが就職とか結婚とかそんなのしているの見ても、別になんとも思っていませんでしたね。
ただある日、ちょっとした会話から言い合いみたいになって、ついに親父の堪忍袋の尾が切れてしまい、「おまえみたいな情けないやつはもう家にいなくていい」と勘当されて追い出されてしまいました。その日から宿なし状態、みたいな。といってももらっていたお小遣いは余っていたので、最初の何日かはビジネスホテルに泊まって、親から「戻ってきてもいいぞ」という連絡があるのではないかと甘えたことを考えていたわけですが(笑)
残念ながらそういう展開にもならず、これはもう本格的に突き放されてしまった様子なので、さあどうしようかと若干暗くなりました。自分、恥ずかしながら、これまでロクに働いたこともないもので…この歳になってバイト初とか、なんか面接行くのも恥ずかしいし。
友達の紹介で入店させてもらいました
と、そんな葛藤があって、思い切って友達に自分の現状を相談してみたところ、「おまえは仕方ないヤツだな」と言われながらも、そいつがやっている出張ホストのお店に入れてもらうことになりました。何もせず遊んでばかりいた自分にとって、初のバイト先が、出張ホストです。なかなか緊張します。
求人募集を見て悩んで応募してきた…みたいなもんじゃなくて、本当に友達に紹介されるままだったので深く考えもしなかったのですが、わりとバイト初心者にとって出張ホストって難しそうなもんですよね(笑)高収入、高額バイト、みたいな友達の言葉を信じ込んでこれまたテキトーにきたわけですが、まあ、結果から言うとこれは正解でした。
自分みたいにとぼけた人間って、わりとお客様にウケがいいみたいなんですよね。「話しているとなんか力が抜ける」と言われたりして、こちらとしては特別何かをしている感じでもないのですが、「はあ」とか言ってもじもじしながら、どうやらお客様には癒しに感じられる時間が提供できているようです。
働いて稼いだお金で労働の楽しさを知る
今、こうして働き始めて半年くらいになるかな。すっかり改心した気分でいます。やっぱり大学まで出してもらって何もしないでいるというのは、両親に対して申し訳ないことでした。不動産屋の息子で、いつか自分もいいポジションで跡取りさせてもらえるんだろうとか、なんの勉強もしないで考えていたわけで…。
こうして出張ホストで働いて稼いだお金で、自分の家を借り、生活するというのは、なんだか気分がいいものです。この歳になって初めて労働の楽しさみたいなものも知りました。
兄に相談したところ、「おまえが改心したといっても、宅建の資格を取らないことには家には戻してやれない」と言われたので、今は資格をとるために学校に通っています。なんとか親子関係を改善して、将来は、兄と一緒に頑張りたいと思います。
蒼(仮名) 24歳 フリーター