困ったときにはここが頼りです
僕は東京都内の零細企業の三代目です。父親も含めて四人だけの小さな工場で、まあみんなファミリーみたいなものですが、一応代表です。ただ本当に細々とやっていて、お得意様も昔からで増えも減りもしないので、なかなかこういう時代になると厳しいものがあります。
そういうわけで、実はまあ以前からなのですが、お金に困ったときには他の従業員には内緒で出張ホストをやっています。なぜ僕のような地味なヤツがこんな世界に、と思われるかもしれませんね。確かに新宿の高額バイトと零細工場の三代目なんて、接点がないように見えるでしょう。
確かに求人募集を見てちゃんと応募して、という道を踏んだわけではありません。打ち明けると僕は地元の先輩がこのお店の卒業生なんです。いつでもやたらと羽振りのいい先輩だったのですが、辞める間際に、「おまえはいいヤツだから」とここを紹介してもらいました。それ以来、資金繰りに困ったときや、個人的にお金が欲しいときには世話になっています。
本業がいつまで続くが不安ではありますが
自営業者ということもあって、潰れるも何も僕次第。ただ父親の目の黒いうちはちゃんとやれるように、こういう副業だって意味ある資金繰りの一種だと思い、しっかりと責任を果たしたいと思います。それもいつまでも続くかですが、続く限りは全力で取り組みます。
とはいえ内心、ここをかなりアテにしている気持ちを隠すことはできません。というのもやはり稼げるし、そうやって不定期にですが出勤しているうちに、やはり良くしてくださるお客様も出てくるのです。そうなると、どうしたって「いつでもここがある」と甘えてしまいそうになる気持ちが出ます。
でもどうなんでしょう。今後の時代をサバイブしていくにあたって、僕みたいな自営業者は本当に一本でいくべきなんでしょうか。自分としては、そうは思いません。何かひとつくらい別のやり方、生き方、稼ぎ口、そういうものをキープしておきたい、それが本音です。
いつもお店には感謝しています
自分はわりあい真面目な性格もあるせいか、お店には大事に扱っていただけているんだろうなという感じがしています。ありがとうございます。特にマネージャーさんには頭が上がらないほどお世話になっています。こちらの事情も汲み取ってくださり、働き方を一緒に考えてくれたりと、人間味あるお人柄にいつも感服するばかりです。
新宿の街にもだんだんと親しみを覚えるようになってきました。これも慣れですかね。僕みたいに都内に住んでいてもこういう華やかな場所とは縁遠い人でも、ひとつ働き方次第で接点を作ることはできるみたいなので、ともあれやってみることだと僕は言いたいです。
本業の方は浮き沈みを繰り返しながら、いつもの様子です。長い目で見てあまり展望があるとは思いませんが、その分を補うために、このお店に自分の世界を持っておきたいです。
三郎(仮名) 23歳 工場社長