キャバクラの黒服として働いていた頃、自分は店の裏方で毎日を過ごしていました。来店客の席を案内したり、ドリンクを運んだり、店全体の流れを整える仕事です。目立つ仕事ではありませんが、店を支える重要な役割だと自分では思っていたし、その仕事にはやりがいを感じていました。ただ、その中で日に日に強くなっていった思いがありました。それは「いずれ自分の店を持ちたい」という夢です。
黒服として働く中で、店舗運営の仕組みや顧客管理、スタッフマネジメントなど、経営に関わるあらゆる工程を間近で見る機会に恵まれていました。その経験は間違いなく貴重です。でも同時に、開業資金を貯めるスピードが自分の目標に追いついていないという焦りが、日に日に大きくなっていったんです。このままのペースでは、独立までにあと何年かかるんだろう、そんな不安が頭の中を占めるようになりました。
稼げる仕事を探して、出張ホストにたどり着く
もっと効率よく資金を貯める方法はないか、そう考えるようになった僕は、より稼げる仕事を探し始めました。夜職の求人サイトを眺めながら、自分の経験を活かせる仕事は何か、真剣に考えるようになったんです。その時に目に留まったのが、出張ホストの求人でした。給料の相場を見てみると、自分の黒服としての給与とは比較にならないほど高額でした。
ただし、未知の領域への一歩です。接客の最前線に立つのは初めてだし、黒服として裏方に徹してきた自分が、果たして務まるのか。そういう不安はもちろんありました。でも、黒服として培った気配りや店舗運営の知識なら、きっと役に立つはずだと思い、思い切って応募に踏み切りました。面接で、これまでのキャバクラでの経験を率直に話したところ、面接官の反応が良かったんです。採用されるまでに時間はかかりませんでした。
裏方で見た景色と、最前線で見える景色は全く違う
実際に働き始めると、戸惑うことばかりでした。接客というのは、ただ話しかけることではなく、お客様の表情や言葉の端々から気持ちを読み取り、その人に合わせた時間を作り出すことなんだと気付きました。黒服としては、スタッフ同士の動きを読むことが習慣づいていたのですが、相手はお客様です。全く違う次元の気配りが必要でした。
ですが、ここで思いがけない気付きがありました。黒服として見てきた接客のノウハウが、思いのほか役に立つんです。店の雰囲気の作り方、お客様との距離感の取り方、会話の流れから相手が次に何を望むかを先読みする感覚。これらは黒服として毎日目にしていたスキルでした。その知識を自分が実践する立場になることで、より深く理解できるようになったんです。
経営の相談を受けた時、人生が変わった気がした
働き始めて数ヶ月が経った頃、指名してくださっているお客様から、経営に関する相談を持ちかけられました。自分の事業をどう発展させるか、スタッフの扱い方、新規事業への向き合い方。こんな相談をされるとは全く想定していませんでした。でも、黒服として店舗運営の現場を見てきた自分の知識が、その方にとって役に立つ情報になったみたいなんです。
その時、自分は初めて実感しました。自分の知識が、誰かに頼りにされたという経験です。これはただのアルバイトではなく、自分の人生経験が直結する仕事なんだ、そう強く感じました。それ以来、自信を持って仕事に向き合えるようになりました。不思議なことに、その後の指名数も増えていき、売上も安定し始めたんです。
数ヶ月で売上も安定し、独立資金の貯蓄ペースは黒服時代と比較にならないほど加速しました。月々の貯金額を見るたびに、「あ、本当に近づいてるんだ」という実感が湧いてきます。新宿という東京の中心地で働く中で、様々なビジネスパーソンと出会い、その人たちの生き方や考え方に触れるのも、自分の財産になっていると感じています。
接客の現場に立つことで、経営に対する視点が変わった
最大の収穫は、何といっても視点の変化です。裏方として見ていた店舗運営と、接客の現場に立って見える景色は全く違います。スタッフ側の視点では気付かなかった、お客様の心理や、店舗における細かい工夫の重要性が、今では手に取るように分かります。
例えば、照明の当たり方一つで場の雰囲気がどう変わるのか、どのタイミングで声をかけるかで相手の反応がどう変わるのか。こういう細部にこだわることが、店全体の質を決めるんだということが、身をもって理解できるようになりました。いずれ自分の店を作る時、この経験は絶対に活きてくるはずです。
将来への確かな歩みを進んでいく
将来、キャバクラの経営者になることが自分の目標です。そのために必要な資金と経営経験を、今この仕事で着実に積み上げているという実感があります。出張ホストの仕事は、単なる副業や資金稼ぎの手段ではなく、夢に向かうための最高の学びの場になっています。
多くの人が、このキャリアを一つの終着点だと考えるかもしれません。でも自分にとっては、これは通過点であり、成長の道です。黒服から出張ホストへという転職は、単に稼ぎを増やすだけではなく、自分の人生設計を前に進めるための重要なステップになりました。この仕事を通じて、経営者としての素養も磨けている。そう思うと、毎日が充実しています。
蓬 21歳 キャバクラ黒服

