バンドでベースを担当してから、もう3年になります。ステージに立つたびに「いつかこれで食べていくんだ」という想いが強くなっていくんですが、現実はそう甘くありませんでした。平日は居酒屋のバイト、休日もスタジオ代を稼ぐためにまた別のバイト―そんな生活の中では、新しい機材を揃えることも、ライブツアーの資金を貯めることも、夢のまた夢に思えていました。稼いだお金のほとんどが生活費に消えていく現実に、何度も悔しい思いをしていました。
バイト代だけでは賄いきれない、プロミュージシャンへの道
同世代でプロのベーシストとして活動している人たちを見ると、みんなどこかしら時間をやりくりして、工夫して、チャンスをつかんでいるんだなと感じます。でも僕の場合、時給1000円そこそこのバイトで月の大半を占められてしまっては、その「工夫する時間」さえ持てませんでした。
スタジオ代は毎月決まった額がかかりますし、ベースという楽器は定期的なメンテナンスも必要です。新しい機材を試してみたい、より良い音を求めて投資したいという欲求は、ミュージシャンにとって成長に必要なものだと思うんです。それなのに「今月も買えない」を繰り返すのは、本当に辛かった。バンドメンバーたちも同じような悩みを抱えていて、「このままじゃ限界がある」という共通認識が生まれていました。
「シフトの自由度」で音楽と仕事の両立を考えた
何とかできないかと考えていたとき、友人の勧めで出張ホストという仕事を知りました。最初は正直、イメージだけで判断していたんですが、話を聞いてみるとシフトの自由度が高いという点が、僕の状況にぴったり合致していることに気づきました。
ライブの日程がぶつかったら休める、スタジオ予定が延びたら調整できる、そういう柔軟性があれば、音楽活動と両立する余地が生まれるかもしれない。東京で稼げる副業を探していた中で、そう思いました。給与水準も、一般的なアルバイトとは比べ物にならないくらい高いという話でしたし、本気で検討する価値があると感じました。
いろいろ調べてみたら、新宿には大手の出張ホスト求人がたくさんあることに気づきました。アクセスも良く、単価も高いということで、新宿の事業所に応募することに決めました。採用試験では、「バンドでベースをやっています」という話をしたんですが、面接官の方は「あ、表現力がありそうだね」とポジティブに受け取ってくれて、その場で採用してもらえました。
ステージと接客の勝手の違いに最初は戸惑ったけど
実際に働き始めると、想像していた以上に大変な部分も多くありました。ステージに立つのと、マンツーマンで接客するのは全く違う経験です。バンドのライブでは、音と演奏に力を入れていれば良かったんですが、出張ホストの仕事は「相手の話を聴く」「相手のペースに合わせる」という、全く異なるスキルが求められます。
でも不思議なことに、人前に立つことへの度胸だけは、バンド活動で自然と身についていたみたいです。初対面のお客様と接するのも、最初こそ緊張しましたが、ステージに立つ経験があれば「大勢の前で音を出す」のと同じくらい「一人と向き合う」ことに抵抗がなくなるんだと気づきました。ベーシストとしてのリズム感や、バンドで培った「空気を読む力」も、接客の現場で意外と役に立っていました。
3週間くらいで仕事の流れが体に染み込み始めたとき、「あ、これなら続けられるかもしれない」と感じました。もちろん、優しくサポートしてくれたスタッフの皆さんの力も大きかったです。
ライブの話でお客様と盛り上がり、つながりが生まれた
仕事を続けていく中で、予想外の相乗効果が生まれました。バンド活動についての話をお客様にすると、みんな興味を持ってくれるんです。「どんなバンド?」「いつライブやるの?」と聞いてくれて、自分の音楽への想いを話しているうちに、お客様も一緒に盛り上がってくれるようになりました。
中には「今度のライブ、応援に行ってもいい?」と言ってくださるお客様も出始めて、実際に来てくれるようになったんです。ステージ上でお客様の顔を見つけるたびに、「この人とはこういう形で繋がっているんだ」という感謝の気持ちが込み上げてきます。仕事と音楽活動が少しずつつながり始めた瞬間でした。
指名もどんどん増えていきました。単なる接客スキルではなく、「音楽を本気でやっている人」という背景ストーリーが、お客様との信頼関係を深めるのに役立っていたんだと思います。
稼いだ分を機材費に充てられる喜び
稼げるようになってくると、人生が変わりました。以前は「今月も機材が買えない」という悔しい思いをしていたのに、今では欲しい機材を計画的に購入することができるようになったんです。新しいベースアンプを導入したり、メンテナンスをきちんと受けられるようになったり、ライブツアーの資金も少しずつ貯められるようになりました。
バンドメンバーに「お金が回るようになった」という話をすると、みんなも感動してくれて、より一層バンドの活動に熱が入るようになった気がします。高額な収入を得られるようになったからこそ、今まで諦めていた活動の幅が広がってきたんです。
出張ホストの仕事がなかったら、このチャンスはなかったと思います。働く環境が自分の夢をちゃんと支えてくれているという実感が、毎日のモチベーションにもなっています。
プロのベーシストになるための基盤を整える
今、自分の人生の中で何が一番大事かというと、プロのベーシストとして活躍することです。その夢を支える基盤として、この出張ホストの仕事は本当に大切な存在になっています。
バンドメンバーや職場の先輩たちを見ていると、みんな何かしらの目標に向かって頑張っている人たちばかりです。そういう環境の中にいると、自分も「もっと頑張ろう」という気持ちが自然と湧いてきます。応募の決断が、こんなにも人生を変えるとは思いませんでした。
これからも音楽活動と出張ホストの仕事の両立を続けながら、いつかステージの上から「この職場で働いていたから、今がある」と胸を張って言えるようなプロミュージシャンになりたいです。出張ホストの仕事は、単なるお金稼ぎではなく、自分の夢を現実に近づけてくれる、なくてはならない存在なんです。
篤也 23歳 ベーシスト

